連載・コラム アメリカ101

アメリカ101

  • 第四十四回
60種以上の日本の雑誌が、発行とほぼ同時に読める。
LA市立図書館のサービス

 

 

    第四十四回 60種以上の日本の雑誌が、発行とほぼ同時に読める。 LA市立図書館のサービス    

    2020年08月04日 アメリカ101

     今回は、「サンデー毎日」「週刊東洋経済」「Vogue Japan(日本語版)」「NHK G-Media 大相撲」といった60種以上の日本の雑誌が、発行とほぼ同時に、ロサンゼルスに住むわれわれのパソコンに配達(アップロード)されるという耳寄りなトピックスです。このコラムでは、新型コロナウイルス禍のもとで、これまでも「娯楽路線」として、「第二十八回いまだからこそ観たい『幸福な気分』になる映画」(4月17日号)、「第三十回#Stay Homeを楽しむ、目新しい音楽の世界へ乗り出しましょう」(5月1日号)といった実利的な話題をいくつか取り上げてきましたが、その一環です(これらのバックナンバーは、このコラムに添付されているQRコードからアクセス可能)。    アメリカでの図書館の素晴らしさは、LAPL(ロサンゼルス市立図書館)を取り上げた「第九回公共サービスも受けられる図書館を使用しよう」(昨年11月29日号)で紹介した通りですが、最新号の日本の雑誌にアクセスできるという話は、文字通り「知る人ぞ知る」、LAPLの隠れた魅力です。従来は、利用するには直接図書館に出向いてカードを取得する必要があったのですが、コロナ禍ですべての図書館が閉鎖されたことで、特別措置としてE-Cardのオンライン取得が可能となりました。手続きは簡単です。まずグーグル検索でLAPLと入力、ホームページにアクセスします。そこで「E-Card Registration」をクリックすると、入力フォームが出てきますので、そこに姓名/住所/生年月日などの個人情報をインプットして「完了」ボタンを押せば手続き終了です。LAPLへのEアクセスのための個人ナンバーがE メールで送られてきますが、これがLAPLへの“魔法のカギ”となります。    では、その番号を使って日本の雑誌に実際アクセスしてみましょう。まずグーグル検索で「LAPL」と入力、ホームページを開けます。中ほどに「Magazines & Newspapers」があり、そのすぐ下にブルー色の小さな文字で「RBdigital」とあるのをチェックすると、画面が変わって、アクセス可能な、数多くの英語の雑誌が表示されるます(これらを読みたければ、適当にピックアップ。その右端に「☤FILTER」とあるのをクリックすると、「Genre」「Language」と表示されるので後者を選択・クリックすると、Voila!!(じゃじゃーん!!)日本語の雑誌約60種が表示されます。バックナンバーにもアクセス可能です。さらにすごいのは、個々の雑誌を選択した際に、英文で「次号の自動配信を望むか?」とあるので、そこにチェックすれば、次回からは自動的にメールによる配達通知が届きます。もちろん雑誌の種類は限られているものの、ロサンゼルスで座りながらにして日本の雑誌最新号を無料で定期購読できるなどとは、コラム「第九回」で記したアクセス可能な「大手新聞」(毎日新聞)とともに、図書館を利用することで、さまざまな情報/媒体にアクセスできるなどとは夢のようです。    LAPLを通じては、このような日本語の新聞/雑誌だけではなく、英語をはじめとした各国語の媒体にもアクセス可能であり、無数の電子書籍やCD、映画を読んだり、聞いたり、視聴ができるので、時間があれば、このような「図書館という宝庫」をくまなく探索する冒険に旅立ち、あくなき知的好奇心を満たすことが可能です。無聊をかこち、時間を持て余すといったこともない充実した時を過ごすことができるのは確実です。     著者/佐藤成文(さとう・しげぶみ) 通称:セイブン 1940年東京都出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。  

  • 第四十三回 
性的虐待に協力した容疑で逮捕以来の
“代名詞” 「02879-509」

 

    第四十三回  性的虐待に協力した容疑で逮捕以来の “代名詞” 「02879-509」  

    2020年07月28日 アメリカ101

    「02879-509」というのがニューヨーク・ブルックリンにあるメトロポリタン勾留センター(MDC)で公判待ちのギレーヌ・マクスウェルの“背番号”です。連邦司法制度のもとで収容された人物には番号がつけられており、ジェフリー・エプステーンの交際相手で、未成年の女性をあっせんし、性的虐待に協力した容疑で逮捕以来の“代名詞”でもあります。弁護側は多額の保釈金と自宅待機を条件に保釈を求めたのですが、ニューヨーク連邦地裁は7月14日の罪状認否公判で、ギレーヌがアメリカ、フランス、イギリスの旅券を保持し、数百万ドルの複数の銀行口座があることなどから、逃亡の恐れがあるとして、申請を拒否、ほぼ1年後の2021年7月21日からの審理開始を明らかにしました。   前回のコラムで「恵まれた環境で育」ったと記しましたが、文字通りイギリス上流社会の一員として半生を過ごしてきました。母親がフランス人で、フランスで生まれたことから、Ghislaineというフランス系の命名となったようで、本人もフランス風の発音である「ギレーヌ」と呼称しています。「甘い誓約」(sweet pledge)といった宗教的な意味合いで、母親は、他の子供と同じくイギリス系のアングリカン(聖公会)教徒として養育。オクスフォードにあるヘッディントンホールと呼ばれる部屋数53という大邸宅で少女時代を過ごしたあと、高校まではイギリス有数の寄宿制私立校マールボロ・カレッジで学んでいます。   ここは、ウイリアム王子の配偶者キャサリン妃や、同王子の弟で、今回のスキャンダルで買春疑惑の渦中にあるアンドルー王子とセーラ・ファーガソンの次女ユージェニー王妃も在籍していた、上流階級の子女が集う有数の名門校です。その後、オクスフォード大学に進学していますが、在籍していたのは、同大学でも最も人気の高いベリオール・カレッジです。古くは「国富論」で知られる経済学者アダム・スミスが卒業生として知られていますが、現職のボリス・ジョンソンなどこれまでに4人の首相経験者を輩出しているほか、雅子皇后も外交官研修留学しています。   父である「メディア王」ロバート・マクスウェルが、執務でも過ごしていた豪華大型ヨットを、末娘ギレーヌに因んで名付けたのをみても、その寵愛ぶりのほどがわかりますが、その「変死」の直前に買収したニューヨーク・ポストを手掛かりにアメリカ進出を描いていた構想の中で、ギレーヌに要の役割を期待していたものとみられています。それに応えるように、学生時代から知り合いだったアンドルー王子との関係を“売り物”にしてニューヨーク社交界の名士として、さまざまなパーティなどの有名人の集まりで知られるようになり、エプステーンとの親密な関係もあって、1990年代2010年代半ばまで社交界の華だったようです。   その人気の秘密はアンドルー王子を通じたイギリス上流階級との関係を中心に、若い頃からのsocialiteとしての巧みな社交術、それを裏付けする上流階級風の英語の発音があったようです。さまざまな「英米の特殊関係」の一面をうかがわせるものでしょう。   マクスウェルが勾留されているMDCは、悪名高い劣悪な環境の拘置施設のひとつです。これまで優雅な生活環境にあったマクスウェルにとって、これら施設内で新型コロナウイルスの感染が悪化している中、悪夢そのものの毎日でしょう。エプステーンが死亡してから1年が経過しますが、事件の全容を知る立場にあっただけに、無罪を主張しているものの、有罪判決となれば、罪状次第で長い服役となる可能性もあり、長期刑を回避するために検察側の捜査に協力し、名前が挙がっている有名人と事件との関わりなど、「真実」を語るのかが今後の焦点でしょう。 折しも、親交のあったトランプ大統領が7月21日の記者会見で、「I just wish her well frankly」(うまくいけばいいね)と“意味深”な発言をしていますが・・・。     著者/佐藤成文(さとう・しげぶみ) 通称:セイブン 1940年東京都出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。  

  • 第四十二回 
アメリカの大富豪が絡むスパイ活動 、売春。
「21世紀最大のスキャンダル」

 

    第四十二回  アメリカの大富豪が絡むスパイ活動 、売春。 「21世紀最大のスキャンダル」  

    2020年07月21日 アメリカ101

     このところの毎日7百人から8百人が死亡するという新型コロナウイルス渦にあっては、未成年者を含めた女性への性的虐待をめぐる性犯罪事件を取り上げるのは不適切かもしれませんが、その中心の男女2人の人脈/交友関係、そして、その大規模な広がりをみると、「21世紀最大のスキャンダル」と形容しても過言ではないほどのインパクトのある事件であり、今後長年にわたり繰り返し大きく報道されることは間違いないとすれば、このコラムで取り上げる価値があるのではないかと思います。「親しい交遊があった」人物だけでも、エリザベス英女王の次男アンドルー王子(ヨーク公爵)、ビル・クリントン第42代大統領、ドナルド・トランプ大統領第45代大統領などなどという顔ぶれで、しかも当事者のひとりは、親子とも別々のスキャンダルの主役でもあり、いずれの事件でもイスラエル諜報機関の影がちらつくというスパイ小説もどきの展開とあっては、まったくの興味本位でも目を離せないニュースです。    事件の概要は日本のメディアでも報じられ、ご存じの方も多いでしょうが、主役のひとりはアメリカの大富豪ジェフリー・エプスティーンです。ナチス・ドイツのホロコースト(大量虐殺)でアメリカに逃れたユダヤ人を両親にニューヨーク・ブルックリンで生まれ、数理統計に精通した才能を生かして証券業界で頭角を現し、コンサルタントとしてヘッジファンドを駆使して巨額の富を手にした人物。性的欲望を満たすため、未成年者を含む多数(数百人といわれる)の女性の買春・性的虐待・性的搾取の罪で2回にわたり起訴され、最初2008年にはフロリダ州での裁判で不可解な司法取引で重罪を回避、禁固13カ月を服役。その後同様の罪で昨年7月に逮捕・起訴されたものの、ニューヨーク市内の勾留施設で自殺したことで事件の真相解明がとん挫となりました。    しかしFBI(連邦捜査局)はその後、1990年代からエプスティーンの交際相手で、若い女性を口説く共謀者として長年手助けを続けたとしてイギリス人ギレーヌ・マクスウェル(58)を「最重要指名手配者」にリストアップ、今年7月にニューハンプシャー州で逮捕、起訴したことで、事件が再び脚光を浴びています。    マクスウェルの父親ロバートは、東欧出身のユダヤ人で、ナチス・ドイツを逃れてイギリスに渡り、英陸軍兵士として第二次世界大戦で欧州戦線に参戦、戦後は占領軍の通訳としてドイツ出版界に関与、それを手掛かりにイギリスで出版業から新聞業界で大成功を収め、労働党下院議員を経験するなど「新聞王」として名をはせた富豪です。その第9子のギレーヌは恵まれた環境で育ち、社交界の名士(ソーシャライト=socialite)として学生時代からアンドルー王子とも面識があったといいます。しかし父親が、経営企業の不正会計疑惑渦中の1991年11月に、休養先の大西洋カナリア諸島沖合に停泊していた自ら所有する大型豪華ヨット「レディ・ギレーヌ号」から姿を消し、後日水死体で発見され、「メディア帝国」が崩壊するという急展開の直後にニューヨークに移り住み、日を経ずにして、イギリスでの人脈を背景に、ここでも直ぐに社交界の名士となり、そこでエプスティーンと知り合い、「一心同体」で買春に携わったというのが容疑内容です。ロバートはユダヤ人国家イスラエルを支援、スパイ活動もいとわなかったとの噂もあり、葬儀はエルサレムで国葬並みに挙行されたほどです。    (次回につづく)   著者/佐藤成文(さとう・しげぶみ) 通称:セイブン 1940年東京都出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。  

  • 第四十一回
学生ビザへの規制。
世界最大の留学生受け入れ国アメリカの行方

 

    第四十一回 学生ビザへの規制。 世界最大の留学生受け入れ国アメリカの行方  

    2020年07月14日 アメリカ101

     「えぐい」というのか「えげつない」というのか、トランプ政権による外国人留学生を対象とした、アメリカ滞在資格に関する新たな指示(directive)です。新型コロナウイルス感染拡大が続く一方で、「アメリカが正常化の過程にある」という、11月3日が投票日の大統領選挙に向けたドナルド・トランプ大統領の支持層向けの「ええかっこしい」戦略の一環でしょう。   その要となる教育機関再開促進で、各大学が模索している授業形態を、オンライン方式重視ではなく、対面式授業を主流とするよう大学当局への圧力をかける“策略”として、弱い立場にある留学生を利用/犠牲とした卑劣ともいえる動きです。再選へのハードルが一段と高くなりつつある中、「合法、非合法のいずれにもかかわらず移民増加は好ましくない」というトランプ支持層の感情にもアピールする「一石二鳥」的な効果を狙ったものでしょう。    留学生を合わせて1万人近く擁するハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)は直ちに、差し止め命令を求める訴訟をボストンの連邦地裁に起こしましたが、「対面授業への大学に対する圧力だ」「学生や教授陣などの健康と安全への配慮を欠いたもの」として激しく反発するなど、全米で合計100万人という留学生を抱える各大学は、授業形式の再検討や、留学生へのガイダンス、留学生受け入れによる大学財政基盤への貢献度の見直しを迫られています。(注:トランプ政権は、14日になって、指示を撤回しました。)    外国人留学生がアメリカの大学で学ぶために必要なビザ(査証)は、大きく分けてF-1(フルコース履修)とM-1(職業訓練コース)があり、受講については対面式が原則で、オンライン授業は1講座しか認められていませんでした。コロナウイルス渦で、暫定的に複数のオンライン講座がOKとなっていたのですが、国土安全保障省(DHS)傘下の移民税関捜査局(ICE)は、秋からの新学期については、留学生に対面授業への出席を義務付け、オンライン講座だけの受講は留学生資格を失うとし、国外退去となるとする新たな指針を明らかにしたわけです。すでにアメリカで勉学を続けている留学生は、全面的にオンライン授業に移行する大学では“失格”となり、対面式授業がある他の大学への転学か、帰国を余儀なくされることもありえます。また新学期でアメリカに留学予定の学生は、対面式授業のある大学を選ぶ必要があり、専攻分野なども関係し、さまざまな影響、波乱、混乱を生んでいます。    アメリカは世界最大の留学生受け入れ国で、2018-2019年度の最新統計では、トランプ政権発足で一時落ち込んだものの、増加傾向が続いており、中国(37万人)、インド(20万人)両国で全体の52%を占め、次いで韓国(5万人)、サウジアラビア(3万人)、カナダ(2万人)などで、日本は8位(1万8千人)です。留学生の積極的受け入れは、近年では党派を問わず歴代大統領の方針であり、「移民国家」であるアメリカの国是ともいうべきものです。トランプ政権下でも、国務省で留学生交流を担当する教育・文化局を統括するマリー・ロイス国務次官補も「2019年留学生白書」(Open Door 2019 )で、同局の最優先課題が「将来にわたり、さらに数多くの留学生を受け入れることにある」と謳っていますが、狭義な「アメリカ第一主義」を前面に打ち出し、内向き志向を強めるトランプの下でのアメリカは「希望の灯」を掲げる「自由の女神」も顔をしかめる“普通の国”に成り下がりつつあるのでしょうか。          著者/佐藤成文(さとう・しげぶみ) 通称:セイブン 1940年東京都出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。  

  • 第四十回
バイデン陣営による有力女性政治家への身元調査(vetting)

 

    第四十回 バイデン陣営による有力女性政治家への身元調査(vetting)  

    2020年07月07日 アメリカ101

     伝わってくるのは、11月3日の投票日に向けて“起死回生”をはかるトランプ陣営による周到な「中傷/悪口/人身攻撃作戦」(smear campaign)へ向けた準備です。新型コロナウイルス渦に加えて白人警官による黒人殺害事件の続発に伴う人種差別撤廃に向けた抜本的な社会・制度改革の必要性が高まる中、強硬路線を突っ走るドナルド・トランプ大統領は、支持基盤の地固めに加えて、民主党の対立候補指名が確実なジョー・バイデン前副大統領と、副大統領候補となる女性政治家の“あら探し”を選挙戦の中心に据えて、巻き返しを図る戦略のようです。    トランプの再選は、各種世論調査での支持率が40%前後に低迷、バイデンに2ケタも引き離されるという状況が続き、暗雲が立ち込めています。2017年に就任以来の支持率の低さは近年の大統領の中で際立っています。任期中にはさまざまな出来事次第で支持率は大きく上下するのが通例で、ブッシュ親子についてみると、息子ブッシュ(43代)は2011年の同時多発テロ事件への対応で一時は90%を超えたものの、逆に20%台に低迷するという振れの大きさでした。父ブッシュ(41代)も第一次イラク戦争で80%台後半の高い支持率を記録したあと、経済面での失政から20%後半に急落、再選に失敗して引退を余儀なくされています。   ところがトランプは就任以来3年半で、40%から50%という、「安定した」狭い幅を上下していて、基本的には、「必ず投票所に足を運ぶ」という“基礎票”は4割とみていいでしょう。これに、どれだけ浮動票を上積みできるかが当落のカギを握るわけですが、前回2016年選挙では、ヒラリー・トランプの“不人気”という“敵失”で勝利したものの、今回はトランプ政権への幻滅感が浮動層に強まっていて、苦しい展開です。    再選には株価上昇に見られる好況持続と、「小さな政府」哲学貫徹を売り物としたトランピズム(トランプ主義)がセールスポイントですが、コロナウイルス渦と人種差別問題が緊急課題として浮上してきたことで“ご破算”となり、模索が続いていました。これまでは、性急な経済活動再開促進や地固めのための大規模な地方遊説集会が軸となってきましたが、選挙戦の本格化で、個人攻撃を前面に打ち出す方向が強まる見通しです。    トランプの「あら探し」作戦は、弾劾訴追にまで追い込まれた「ウクライナ疑惑」での、息子ハンターをめぐるバイデンの介入疑惑を利用したウクライナ政府への働きかけが核心でした。そしてバイデン本人については女性事務職員へのセクハラ疑惑が依然としてくすぶっていますが、当面は8月早々にずれ込んでいるバイデンの副大統領候補選びの行方が焦点です。バイデン陣営による有力女性政治家への身元調査(vetting)が進んでいますが、同時にトランプ支持組織による“身体検査”も、情報公開法に基づく調査を含めてきわめて広範囲に進められていると伝えられます。有力視されるエリザベス・ウォーレン上院議員には「アメリカン・インディアン・コネクション」、カマラ・ハリス上院議員には「交際男性関係」といった手がかり材料があり、白紙状態だった候補政治家についても、当然ながら“あら探し”が進行中でしょうし、バイデン側も、それを注視しながら、対応策を練るという舞台裏での動きが活発となっていることは間違いありません。派手な表面の動きとは裏腹の、魑魅魍魎が徘徊するウラの世界への目配りも欠かせません。      著者/佐藤成文(さとう・しげぶみ) 通称:セイブン 1940年東京都出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。