連載・コラム 本田直之

編集: Weekly LALALA - 2019年11月20日

VOL.3

「なくてもいい物」を持たない 不要な物はあなたの何を〝縛っている〟のか

 

第一回で「持たない生き方とは、持ち物を減らす断捨離やミニマリズム、シンプルライフなどといった暮らしのスタイルやノウハウではありません。大事なのは、物を減らすことではなく、自分にとって必要なモノを見極め、それを選び取り、見た目ではない豊かさを手に入れること。つまり、持たない生き方とは、自ら考え、選択し、幸せに、自由に暮らしていく生き方の提案です」と書きました。

誰かに言われたから捨てるのではなく、自分で決断し、選びとっていくこと。それが物との向き合い方の大前提となります。

 

まずはあなたの身の回りを見渡してみましょう。部屋やカバンの中など、改めて注意してみると不要な物がいくつもあることに気づくはずです。こうした多くの物に囲まれた暮らしというのは、それだけであなたの自由を奪ってしまいます。

 

例えば、住宅ローンを組んで買った家という物があり、そこにさまざまな物を詰め込んで暮らしていると、移動の自由、職業選択の自由が狭まっていきます。

しかし、「自分は持ち家を持たない」と決めることができれば、仕事選びも居場所選びも自由になり、身軽に動けるようになります。

 

物との向き合い方で重要なのは、「あえて捨てる」という感覚を持つことです。 自分にとって何が大事かを見極められれば、必要な物以外を捨てることができます。それは持つことをあきらめるという消極的な選択ではなく、あえて捨てることで、身軽に、自由になるためです。

ところが、自分にとって何が幸せかわからず、進みたい道が決まっていない人は、常に不安を抱えています。その不安を埋めようと物を買い、必要以上に人との繋がりを求め、それでも満足感を得られずに「もっともっと」と自分を縛っていきます。

 

かつては社会や会社が与えてくれるものに乗っていれば幸せになれました。しかし、今は何が自分にとって幸せなのか、自ら考え、選ばなければ満足感を得られない時代です。

少しでも自分は不要な物に縛られていると感じているなら、こう問いかけてみてください。 あなたにとって本当に重要なものは何ですか?

 

一歩外に踏み出すことで、磨かれるもの

 

自分にとって本当に重要な物を知るためには、好奇心が欠かせません。

今はまだ知らない物をみつけ、もっとよく知りたいという欲求は人を成長させてくれます。子どもたちの目がキラキラと輝き、ただ散歩しているだけでもすごく楽しそうなのはすべてが新しい体験だからです。 何も知らないからこそ、子どもたちは好奇心の塊となって目をキラキラとさせています。

 

ところが、大人になってくると多くの人がキラキラを失っていきます。それは経験が増え、いろいろなことがわかった気になってしまうからです。 好奇心よりも諦めの気持ちが先に立ち、新しい経験やチャンスを前にしても「いや、やってみてもいいけど、まあ、このくらいでしょう」と尻込みしてしまう。この知った気になる、わかった気になるというのは人生においてマイナスにしかなりません。

試しもせずに知った気になるよりも、何事にも興味を持って行動する方が新しいインプットになります。知っているモノしか選ばない。同じ仲間とばかり飲みに行く。そんなふうに豊富な選択肢があるにもかかわらず、同じモノを追い求めると、どんどん考え方が凝り固まっていきます。

 

大切なのは日頃の行動範囲から一歩外に出ること。自分が普段やっていないことをしてみること。それが思考のストレッチとなり、あらゆる状況に応じて対処できる柔軟性を育みます。

 

わたしが「貰い物」を断るワケ

 

ハワイから日本に戻ってくると、東京は本当にいろいろな物をくれる街だなと思います。 道を歩いていると広告付きのティッシュが差し出され、銀行や保険の窓口で商品に関する手続きをすると粗品が出てきます。年末になると取引のある相手から来年のカレンダーが届き、ドラッグストアでは試供品が配られ、駅にはフリーペーパーや割引券が置かれています。

 

しかし、わたしはある理由から、こうした貰い物をすべて断っています。銀行の名称入りのボールペン、メーカー名の入ったワイングラス、ブランドネーム入りのエコバッグ・・・。一切受け取りません。

なぜなら貰うという行為は完全に受け身だからです。 持つ必要のない物を受け取ること、特に欲しくない物を無料だからといって手にしてしまうこと。安易に何かを受け入れてしまうのは、自分で判断するのを放棄したのと同じことです。

小さな選択かもしれませんが、小さな妥協がいずれは習慣化され、「ま、いいか」という範囲は広がっていきます。そして、無料の物を受け取るかどうかで始まった判断の停止状態が、仕事での意思決定にも影響を及ぼすこともあるのです。

 

「みんながいいと言っているから、いいか」と流されてしまうのはとても危険なことです。 小さな選択肢1つでも、自分はどう思うのか。差し出された無料の粗品は、自分にとって必要な物か。手に入れたい物か。持つべき物か。重要なのは“物”そのものではなく、突き詰めて考えることです。

 

自分が心地良いと思える生き方を手に入れるためには、意思決定が求められる場面1つ1つが、トレーニングとなります。自分の価値観、優先順位をはっきりさせ、ブレない軸を作りましょう。そうしなければ、黙っていても物が押し寄せてくる環境で持たない生き方を実践することなどできません。

ライフスタイルとは勝手にできあがっていくものではなく、どこかで選択することによって成り立つものだからです。

 

これからの時代の、愚かな消費者、普通の消費者、賢い消費者

 

賢い買い物か、そうでないかを分けるのも「考え続けること」がポイントになります。自分は何を求めているのか。そのためにもそもそも物は必要なのか。必要だとしたらどんな生き方、どんな物を選ぶべきなのか。考え続けることでしか、自分を変えることはできません。

 

例えば、「食」というものを通じて考えてみましょう。毎日の食事はわたしたちの体を作る大切なものです。この先、どんな働き方、どんな生き方をしていくにしても体が資本であることは変わりません。

 

そこで質問です。あなたは体の求めに応じた「食べ物」を選んでいるでしょうか。 もし、「安いから」という理由でメニューを決めているのであれば、それは問題です。

わたしもアメリカ留学中、1日3ドルで暮らしていた時代は「安い」という理由だけで食材を選んでいました。短期間だったからやりくりをゲーム感覚で楽しめたものの、長期的に考えると安さを基準にした食生活は肥満などの遠因となり、体に良くない影響として表れてきます。 また、体調を崩してしまった時の生活や仕事への影響、医療費などのコストを考えれば、安さよりも安全や安心を軸にした食材選びを心がけるべきです。

着る物や住む場所にお金をかけ過ぎた結果、自分の口から入り、体を作ってくれる食べ物を節約するというのは非常にバランスを欠いた考え方と言えるでしょう。 フェラーリを買ったものの、手持ちの現金が乏しいので昼ご飯は毎日インスタントラーメンという生活はどう考えても豊かではありません。

 

「本当に必要な物」を見極めるために必要なこと

 

わたしがハワイに移住したのは、サーフィンができて、気候が過ごしやすい場所で生きていたかったから。そしてなによりハワイに住んでいることが好きだったからです。 誰かの真似をしたわけでも、人に自慢したかったわけでもありません。

サーフィンをして、満ち足りている。にこにこと笑っていられるのは、「自分がどうすれば幸せを感じるか」についてよく知っているからです。わかっているから満たされる。誰の手も借りず、自分を幸せに導くことができるのです。 本当に必要な物・・・。それはたぶん、「足る」を「知る」ことです。

 


本田直之

レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役。シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役として2001年にJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行う。ハワイ・東京に拠点を構え、年の5ヶ月をハワイ、3ヶ月を東京、2ヶ月を日本の地域、2ヶ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々を旅しながら、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。これまでに訪れた国は60ヶ国、200都市を超える。 著書にレバレッジシリーズをはじめ、「50歳からのゼロ・リセット」等があり、著書累計300万部突破し、韓国・台湾・中国で翻訳版も発売。


12月は『「必要以上のつながり」を持たない』を掲載します。※本コラムは『何を捨て何を残すかで人生は決まる(青春新書)を引用しています。

 

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  • VOL.6

「やらなくていい仕事」を持たない・2

 

 

    VOL.6 「やらなくていい仕事」を持たない・2    

    2020年02月19日 本田直之

    会社を「愚痴る」人と会社を「自分好みに変えられる」人の違い   日本在住の日本人なら誰でも知っている大企業が大規模なリストラを始め、地域の雇用の受け皿となっていた名門企業が外資に買収され、毎年いくつもの企業が倒産している今、会社も職業もずっと同じ状態が続くものではなくなりました。   1つの会社で定年まで勤め上げるというキャリアプランを果たせる人は少なくなり、「わたしは○○社の○○です」という肩書きに安心してしまうと、変化に対して柔軟に対応できなくなってしまいます。   そういう環境に自分がいることに気づかず、会社の愚痴をこぼしてばかりの人には暗雲が立ち込めています。 なぜなら、愚痴をこぼしている人は知らず知らずのうちに、会社への依存度を高めているからです。 うまくいかない責任を会社に転嫁して、やらされ感を抱えながら仕事をする。自分がうまくいかないのは、上司のせい。「うちの会社が」「うちの部長が」と言いながら、心の底では「会社にいれば食っていける」という安心感を抱いているはずです。   しかし、30歳のビジネスパーソンの労働寿命が、あと35年残っているとして、会社そのものの寿命はどうでしょうか。 35年もの寿命が確実に保証された会社など、どこにもありません。 実際、過去10年の日本の倒産企業の平均寿命を調べると、約23年というデータ(東京商工リサーチ調べ)があります。ほとんどの場合、従業員の労働寿命よりも、会社の寿命の方が先に尽きてしまうのです。 つまり、ぼんやりと会社に依存し、愚痴をこぼしている人はかなり大きなリスクを背負い込んでいるわけです。   とはいえ、1人の社員が奮起して会社そのものを愚痴や不満を感じないように変えることはできません。変わるべきなのは会社ではなく、社員です。 というのも、自分の外にあるものを変えることはできなくても、自分の中を変えていくことは可能だからです。そして、自分の中を変えることによって出てきたアウトプットによって、自分の外にあるものを動かすことができます。   具体的には、仕事をしながら、「会社の中だけで通用するスキル」ではなくITや語学力、公的資格などの「どこに行っても通じる汎用的なスキル」を身につけること、加えて、「会社の看板に頼らずとも付き合ってくれる人脈」を作ることも大切です。   会社に依存している状態から依存しない状態になれば、すべての仕事が将来の自分のためにやっていることに変わり、イヤな上司の存在もきにならなくなってきます。   会社を自分好みに変えられる人の仕事の仕方   わたしには、「会社に依存しない会社員」としていつも思い浮かぶ人がいます。彼はハワイ好きという共通点で知り合った大手広告代理店に勤める知人です。   社内で確実なキャリアを積み上げてきた彼は、ある時、「好きなハワイの仕事がしたい」と考え、ハワイ州観光局の仕事を取ろうと翻弄し始めます。しかし、すでに日本の窓口はライバル会社が押さえており、普通の営業マンなら「絶対、無理」と判断するような状態でした。   ところが、彼は会社の看板ではなく、ハワイへの愛あふれる男として観光局やライバル社の担当者と接近。現地の話題で盛り上がるうち、完全に打ち解けていったのです。もちろん、その間、本来の社業もきちんとこなしていました。 結果的に彼はハワイ州観光局の仕事を取ることに成功し、今では上司を巻き込んで社内に専門の局を作り、局次長となっています。   このエピソードには、見逃してはいけないポイントがあります。 それは彼が損得勘定抜きで好きなハワイの仕事が欲しいと奔走したことについて、会社は応援も反対もしていない点です。 その間、彼の労働時間は相当長くなっていました。しかし、彼が「俺がこれだけやっているのに、会社は何の後押しもしてくれない」などと愚痴をこぼすことはありませんでした。なぜかと言えば、彼は自分の意志で新しい仕事を作るために動いているからです。 そして、会社が動いたのは契約が取れてから。先に彼が変化を起こしたことで、会社が彼の望む方向へと変わっていったのです。   つまり、会社を自分好みに変えられる人とは、将来の自分のために動いている人のこと。 会社へ依存して、目先の仕事を「やらされ感」を持ちながらこなしていても誰ひとり得をしません。ただ、あなたが損をするだけなのです。   「好きを仕事にする」という一種のまやかし   若い人向けの本を読んでいると、よく「好きなことを仕事にしよう!」というフレーズを目にします。耳心地のいい言葉ですし、確かに好きなことを仕事にできたら幸せになれそうな感じがします。   でも、わたしはこの言葉自体が好きではありません。なぜかと言うと、「好きなことを仕事にしよう!」というアドバイスが無責任な一種のまやかしだからです。   例えば、ここにサーフィン好きな若者がいたとしましょう。彼は海の近くで、好きなサーフィンを感じながら働きたいとサーフショップの店員になったとします。 わたしもサーフィンが趣味で、ハワイでは毎日のように楽しんでいるほど大好きです。でも、もし若い頃にサーフィンショップの店員になっていたら、確実にサーフィンが嫌いになっていたと思います。 なぜなら、サーフィンが好きな人が第一に考えるのは、「波がいい時にすぐ海へ行きたい」「そのために波のあるところの近くに住みたい」ということだから。   サーフショップは確かに海の近くにあります。でも、店員になってしまった以上、どんなにいい波がきても営業時間中に店を抜け出すことはできません。売上を伸ばすためには好きでもないメーカーのサーフボードを売らなければいけない場面もでてくるでしょう。なにより、生活の糧を得るためにサーフィンを我慢して、サーフィンのできる環境の中で店にいなければいけないのです。   つまり、彼は好きなことを仕事にするという手近な選択肢を手にしてしまったことで、逆に好きなことから遠のいてしまったわけです。   サーフィンが好きでライフスタイルの中心に置きたいのなら、まず考えるべきなのは、いい波が来た時にすぐに海に行ける自由さと、海の近くに住まいを構え、都市部へ出勤しなくてもいい生活をどう組み立てていくか。手に入れたいライフスタイルを実現するための仕事を探すこと。 一番避けるべきなのは、時間給的な仕事です。   好きなことを仕事にするのではなく、好きなことが仕事になる   わたしは若い時からずっと仕事と遊びの垣根をなくすことを目指してライフスタイルを築いてきましたが、それは最初からすぐにできることではありません。時間をかけて準備をし、少しずつ移行していくというのが実現可能な方法です。   人生には何かに焦点を合わせて、徹底的にがんばる時期が必要です。 「今が楽しければいい」と思って刹那的に生きていたら、何の能力も身につきません。自分に必要な能力を身につけてからでも、人生はたっぷり楽しめます。   会社の外に出ても通用する人の共通点 わたしたちがプロのスポーツ選手の活躍を目にするのは、試合でプレー中の姿です。しかし、わたしたちの目には入らないところで、彼らプロのスポーツ選手は試合に出るため、日常の大半の時間を練習に費やしています。 競技そのものの練習もあれば、コンディションを整えるためのジムトレーニング、食事のケア、生活サイクル作りも試合に出るための練習の一貫です。   彼らはそれを誰かにやらされているのではなく、プロとしてお金をもらい、レギュラーとしてポジションを取って活躍するために自ら行っています。   一方、会社で働く人にとっての試合とは? と考えた場合、通常の業務そのものが試合と言えるでしょう。プロのスポーツ選手と比べると、会社員が行う試合の回数は多く、プレー時間も長く、出場回数にも恵まれています。   では、あなたは試合に向けてどのくらい練習を積み重ねているでしょうか?   ビジネスパーソンにとっての練習は「勉強」です。普段の仕事が本番で、勉強が練習。プロのスポーツ選手で、練習をせずに試合にだけ出る選手はいません。勉強しないのは練習をさぼるのと同じです。業務時間以外に、本を読み、いろんな人に会い、うまく仕事をしている人のやり方を観察して学び、自己投資をしなければ、先細りをしてしまいます。   本田直之 レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役。シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役として2001年にJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行う。ハワイ・東京に拠点を構え、年の5ヶ月をハワイ、3ヶ月を東京、2ヶ月を日本の地域、2ヶ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々を旅しながら、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。これまでに訪れた国は60ヶ国、200都市を超える。 著書にレバレッジシリーズをはじめ、「50歳からのゼロ・リセット」等があり、著書累計300万部突破し、韓国・台湾・中国で翻訳版も発売。   3月は『「振り回されるほどのお金」を持たない』を掲載します。※本コラムは『何を捨て何を残すかで人生は決まる(青春新書)を引用しています。    

  • VOL.5

「やらなくていい仕事」を持たない

 

 

    VOL.5 「やらなくていい仕事」を持たない    

    2020年01月20日 本田直之

    無意味に重い通勤カバン・・・まず「ハコ」から変えてみる   あなたは、「カバンを持つから荷物が増える」と考えたことはありますか? わたしは数年前から実験的にカバンを持ち歩くことをやめました。最初はあえての取り組みでしたが、今ではどうしてもMac Bookを持たなければいけない時以外、手ぶらで移動しています。   そうなってみて気づいたのは、テクノロジーの進化に伴い、スケジュール帳やカメラ、各種資料などのペーパー類がスマホの中に収まったこと。そして、仕事に必要だと思ってカバンに入れていた多くの物がじつは安心するための材料だったということです。   「もしかしたらいつかいるかも・・・」と準備していた物のほとんどは、結局、いつになっても必要ありませんでした。 そんな風に実験してみて初めて得られる気づきというのは、カバンの持ち歩きに限らず、たくさんあります。 もちろん、仕事のステージによっては荷物をたくさん持たなければいけない時期もあるので、全員が試すのは難しいかもしれません。 それでも週に一度でもいいので、カバンを持たないで出かけてみるという実験をしてみてはどうでしょうか。 カバンという小さなハコを使った実験だとしても、その効果は確実です。制約をかけ、日常を自分なりの実験の場に変えていくことによって「本当に必要なモノ」と「じつはいらないモノ」が見えてきます。   カバンの例のように、一度「カバンを持たない不安」という小さな制約をあえて課すことで結果的に「カバンがなければ仕事ができない」という大きな制約を取り除くことだってできるのです。   その「書類」に「会議」、何のためのもの?   仕事をしているとなかなか切り離すことのできない作業が、書類作りや会議への出席です。しかし、本当に必要なのかどうかわからないまま慣例的に作っている報告書や用途が明確ではない資料。現状を報告し合い、次回の開催予定を決めただけで終わる会議。やらなくてもいい仕事のはずなのに・・・と感じながら従っている人も多いはずです。   そこで大切なのは、その「書類」や「会議」が何のためにあるものか?という本質を見失わないことです。 この種類や会議はどんな成果を出すために行われているのか・・・それを問い続けながら、枠の中で改善を試みていきましょう。 そうやって作り出した時間を投資し、自分の力を高めていくことで会社の仕組みとの向き合い方を変えることができます。   労働時間が「ムダに長い」人に共通していること   同じフロアには定時に帰る同僚がいるのに、自分はいつも残業続きで自由に使える時間を作ることもできない・・・ もし、あなたがそんな風に悩んでいるなら、仕事の仕方を見直していきましょう。   時代は刻々と変化し、今はどれだけ作業をしたかではなく、どういう成果を出したかが重視されるようになりました。長期間同じ会社で働けば出世が約束されていた高度経済成長期の頃と同じ発想では、会社に使い捨てられることになるからです。   経験上、労働時間の長い人には、2つの共通点があります。 1つ目は、成果につながらない作業の多さと、それにかける時間の長さです。 例えば、プレゼンテーション用の資料を用意する際、あれこれ頭を悩ませながら時間をかけ、見た目に優れたレジュメを作ってしまう。しかし、それが成果に結びつくかと言えば、そうではありません。 重要なのは、伝えるべき内容の質であり、見た目やそれを作るために費やした作業時間ではないからです。 むしろ、成果から逆算するという視点に立つと、その作業は残業や徹夜までして取り組むべきものではないことが少なくありません。 ところが、長時間労働に悩む人の多くは「作業時間=仕事」だと思い込んでいるのです。 もし、あなたが今、「自分だけが残って毎日のように残業をさせられている」と感じているなら、必ず費やしている作業のどこかにムダがあるはずです。まずは、そのムダを洗い出し、作業そのものとそれにかけていた時間を捨ててしまいましょう。 人は時間があると思うと、効率化の努力や工夫をしなくなり、やらされ感を持ちながら、どんどん時間をかけるようになります。この法則を理解し、あなた自身の仕事の仕方、取り組み方を見直していくべきです。   周りに合わせた「ダラダラ仕事」をゼロにする方法   では、ムダな長時間労働から解放されるには、どうすればいいでしょうか。 まず考えられるのは、プレゼン資料の例のように、仕事のゴールを見据えて「この作業は何のために行うのか?」を問う習慣を持つことも大切です。 それだけで、「やるべきこと」と「やるべきではないこと」のタスクの選択がはっきりとし、ムダを減らすことができます。   また、「時間があるだけ、時間をかけるようになる」という法則を逆手に取るのも効果的です。つまり、あえて「時間がない状態」にしておくのです。   そのために効果的なのが、締め切りを設け、成果から逆算した時間割を作ること。 スウェーデンの海運会社の例のように、外部の環境の変化によって「仕事は午後5時に終わらせなければならない」という締め切りができるだけで、人は変わっていきます。   もし、外圧がないのなら自分で「定時に帰る」というルールを設けて明日から実行していきましょう。それまでのムダが浮き彫りとなり、時間内に終わらせるための試行錯誤が始まります。すると、やらされ感がなくなり、作業は成果のための仕事となっていくのです。   「出世のためにがんばる」ことはなぜ無意味なのか   仕事をする中で評価され、出世することには何の問題もありません。 しかし、出世がゴールになってしまうのは大きな問題です。出世やそれにともなう役職の変化はあるハコの中での出来事であって、一般社会から見ると大きな価値を持つものではないからです。   例えば、転職市場に出た50代の男性が、再就職支援のエージェントに「僕は部長でした。部長ならできます」と自己紹介したとして、それにどんな意味があるでしょうか? たしかに大きな会社ほど、「このプロジェクトに対して予算を引き出すためには、あの人に言って根回しをして、あの役員に働きかければうまくいく」「この企画を通すには、あの部長を押さえておかなければいけない」といったスキルが昇進のカギになるケースがあります。しかし、それはその会社というハコの中でしか通用しないスキルです。 他の会社に行ったら、その役員、その部長はいませんから、その人の持つ調整能力も能力として評価されません。   本人が同じ会社でずっと働いていくつもりならば役立つスキルと言えるかもしれません。しかし、終身雇用制の崩れた今、本人のポジションがこの先も守られる保証はないのです。   ですから、結果として出世が付いてくる人と、「課長になりたい」「部長になりたい」という目標でやってきた人では、外からの評価がまったく異なります。   会社員という守られた立場だからできること   社内での出世を第一に考えることには別の弊害もあります。 それは、減点されないようにどうしても守りに入ってしまうことです。   変化はしてきているものの、多くの日本の会社の人事評価は今も協調性を重視します。そういった組織でマイナスの評価を受けないようにするには、下手にチャレンジなどせず、上司に言われた通りにしている方が確実です。そして、そういうタイプが会社にとって扱いやすい社員として評価され、中間管理職までの道は開けやすい仕組みにもなっています。   本田直之 レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役。シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役として2001年にJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行う。ハワイ・東京に拠点を構え、年の5ヶ月をハワイ、3ヶ月を東京、2ヶ月を日本の地域、2ヶ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々を旅しながら、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。これまでに訪れた国は60ヶ国、200都市を超える。 著書にレバレッジシリーズをはじめ、「50歳からのゼロ・リセット」等があり、著書累計300万部突破し、韓国・台湾・中国で翻訳版も発売。   2月は『「やらなくていい仕事」を持たない・2』を掲載します。※本コラムは『何を捨て何を残すかで人生は決まる(青春新書)を引用しています。    

  • VOL.4

必要以上のつながり」を持たない

 

    VOL.4 必要以上のつながり」を持たない  

    2019年12月20日 本田直之

    「付き合いの良さ」で変えられることは1つもない   講演会の懇談会の場で、ビジネスパーソンから悩み相談を受けることがあります。その際、必ず話題に上がるのが、会社での人間関係の悩みです。実際、新聞社や大手転職サイトが発表した「社会人の悩みベスト10」といったランキングでも、人間関係は上位ベスト3に入っています。   しかし、わたしにはこの悩みが、ピンときません。相手と合わないのなら、無理して付き合わなければいい、そう思うからです。世の中の人全員と付き合う必要はありません。そして、あなたが今いるコミュニティにずっといなければならない理由も義務もありません。   移動は自由です。 どこで働くか、どこで暮らすか、誰と一緒にいるか1人でいるか。100人いれば、100通りの働き方、暮らし方があります。周りがどう思おうと、自分にとってプラスになると思えば、転職も、起業も、東京を離れることも、地方から出てくることも、海外に拠点を持つことも、旅を始めることも、躊躇すべきではありません。   例えば、あなたが狭いコミュニティでの付き合いを優先して、ストレスを溜め込んだ人から相談を受けたら、どう答えるでしょうか。きっとそのコミュニティから一旦、距離を置いてみることを提案するはずです。   すると、悩んでいる人は、「そこに居続けなければ自分の価値が失われる」「戻った時にポジションがなくなる」といった我慢の理由を打ち明けるかもしれません。でも、その理由は無理してまでコミュニティにとどまるに足るものでしょうか。   何かトラブルが起きたら、自分のこととして捉えず、「トラブルを抱えた人から相談を受けている」と考えるよう勧めています。一歩引いてみることで、問題の本質が見えてくるものです。   付き合いの良い自分に息苦しさを感じている人は、自分には自由に行動する力がないと思い込み、弱気になっているだけ。わたしにはそんなふうに感じられます。周りに合わせて生きたところで、何も変わらず、何も始まらず、ストレスにしかなりません。   しがらみを捨てて出て行っても、困ることなど何もないはずです。   押し付けの「協調性」はもういらない   わたしは学生時代、通信簿に必ず「協調性がない」「自己中心的な傾向がある」と書かれてきました。当時は「良くないことかな」と考え込んだこともあります。でも、「無理して居心地の悪い場所に長くいる必要はないんじゃないか?」と思うと、どうしても周りと合わせることができませんでした。   そんなわたしが、就職活動を始めてすぐに気づいたことがあります。それは「自分は大企業は合わない」ということです。理由は「自分で自分の仕事が決められないから」。   大企業では「マーケティング職に就きたい」と思って学生時代から準備してきた人と、何となく就活をくぐり抜けた人が、同じ新入社員として扱われます。   その後、本人の希望とは違う部署に配属されることもあれば、会社のやり方を覚えるための異動もあります。しかもせっかく慣れてくたところでまた別の部署へ移されることもめずらしくありません。「最初の就職はくじ引きのようなもの」と言われるほど働く前から自分がどんな適正を持っているかを正確に知ることはできません。とはいえ、まったく自分で決められないまま、会社の指示に従って流されてしまうのもおかしなことではないでしょうか。   ところが、そのおかしさを「おかしい」と感じさせない仕組みがあります。 それが学校で教えられる「協調性」です。多くの学校は協調性のある従順な従業員を育てることを得意としています。先生の言ったことが正しく、評価されるのは素直に言うことを聞く生徒。成績の良し悪しも、教わったことを記憶して答えることのできる能力で決まります。   そういう環境で育った人は、自然と個性よりも協調性を大事だと思うようになります。協調性を重んじる人は変化に対応する力が乏しく、自ら動き出し、何かを作り出すことに慣れていません。   もし、今、勤めている会社が来年なくなったら? 業界そのものが年々縮小していったら? スティーブ・ジョブスもこう言っていました。 「世間の常識にとらわれてはいけない。それは、他人の考えに従って生きることになるのだから」と。 変化に対応しなければいけない時代に重要になるのは協調性よりも自分で判断していく力です。 ただし、誤解してほしくないことが1つあります。 それは、「協調性を持たない=人間性が良くない」ではないこと。 人間性の悪い人は何事もうまくいきません。 大事なのは、他人に流されず、自分で物事を判断できる人間でいながら、お互いの個性を尊重するようなあり方。 仕事も人生も1人では何も成し遂げることはできません。叶えたい理想がある人ほど、必ず仲間の助けが必要になります。その時、人間性ゼロの嫌なヤツになっていたら、仲間と一緒に幸せも遠ざけてしまうことになるでしょう。   本物の人脈を作るたった1つの手段   本物の人脈というのは、一緒に成長できる仲間、パートナーとのつながりです。勤めている会社で作ることのできるつながりは、上司や部下といった関係を起点とした「縦の人脈」が中心になります。しかし、本物の人脈となるのは出会いの時点で、肩書きも関係なく、利害関係もない「横の人脈」です。   そんな横の人脈を作るのに最も適している場が、異業種の人たちが集まる交流会です。そこで大切なのが、会に参加するか、自分で会を立ち上げるかということです。 自ら会を主催する時には、とにかくテーマを絞り込むといいでしょう。   ひとりの時間への投資が未来のあなたを作る   今の時代、何かを調べたいと思った時、片手にスマホがあればすぐに答えを知ることができます。これは20年前でには考えられなかった環境です。   ところが、その圧倒的な便利さの一方で失われてしまった時間があります。 それは、「ひとりで立ち止まって考える時間」です。 例えば、自分の生き方や仕事についての悩みも、ある程度はネットが答えてくれます。そんな環境で過ごすうち、わたしたちは流されがちになってはいないでしょうか。 何かを決める時、すぐにネットの向こうに答えを求めるのは、外部のアドバイザーに判断を求めるようなものです。 専門家の見解や法的な解釈が必要なケースや口コミを参考にするのもいいでしょう。 しかし、最後に決めるのは自分自身だということを忘れないでください。 一番怖いのは、なんとなく流されたまま生きてしまうことです。 朝起きて会社に行き、与えられた仕事をこなす。 夜、会社を出て家に帰り、食を済ませて、床につく。 休日は家事や雑事を片付け、ぼんやりと過ごすうちに終わってしまう。 忙しい日々では当たり前になりがちな時間の使い方です。 こうした時間は、たとえ、ひとりで過ごしていても物事を考える時間にはなっていません。物事を考えるための「ひとりの時間」は、あえて作らなければ取れないものです。 ところが、忙しさの中で、「人生には大きな変化はない」「日常には終わりがない」と勘違いしていると、人は立ち止まって考えることをサボりがちになってしまいます。   でも、もしあなたの身に明日、何かが起きるとしたらどうでしょう。 手遅れになる前に、ひとりの時間を作り、「この生活を続けていったら10年後の自分はどうなるか」を想像してみましょう。日常がいかに大切な時間か気づくはずです。   流されたままになっている時間を有効に使うようにして、「この人はおもしろそうだな」「会ってみたいな」と思われるような人になれるよう投資していきましょう。 インプットが少ない人はアウトプットも少なくなり、周りに貢献する機会が減っていきます。 ひとりの時間を大切にし、あなたの興味の赴くまま、本を読み、旅をし、地場のおいしいものを食べる。そういった1つ1つの経験がインプットとなり、あなたの未来への投資となるのです。   10年後は遠い未来のようで、確実に今日という日とつながっています。   本田直之 レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役。シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役として2001年にJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行う。ハワイ・東京に拠点を構え、年の5ヶ月をハワイ、3ヶ月を東京、2ヶ月を日本の地域、2ヶ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々を旅しながら、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。これまでに訪れた国は60ヶ国、200都市を超える。 著書にレバレッジシリーズをはじめ、「50歳からのゼロ・リセット」等があり、著書累計300万部突破し、韓国・台湾・中国で翻訳版も発売。   1月は『「やらなくていい仕事」を持たない』を掲載します。※本コラムは『何を捨て何を残すかで人生は決まる(青春新書)を引用しています。    

  • VOL.2

「人生を縛る常識」を持たない

〜大きく変化する時代には、誰にでも成功のチャンスがある〜

 

    VOL.2 「人生を縛る常識」を持たない 〜大きく変化する時代には、誰にでも成功のチャンスがある〜  

    2019年10月20日 本田直之

    わたしはMBAを取るためにアメリカへ留学してすぐ、すごく気が楽になっているのに気づきました。というのも、アメリカの社会は「自分と他の人の意見が違うのは、当たり前」という前提で成り立っていたからです。 日本ではどうしても個人よりも世間の価値観を優先するような風潮があります。 例えば、誰かがスキャンダルを起こし、それを世間が悪いと判断すると、擁護する少数派の声は異質なものとして排除されていきます。 一方、アメリカではさまざまな人種が集まって暮らしているので、思考の幅も価値観もいろいろです。全員の意見が一致することなど最初からないという前提があり、Aさんの考え方もBさんの考え方も尊重しながら、議論をする土壌があります。 それは自分らしいライフスタイルを作りたいと考えていたわたしにとって、とても居心地のいい社会でした。なりふりかまわず勉強していて、風変わりなヤツだなと思われても「あれが彼のスタイルだ」と尊重されるわけです。 ところが日本では人と違う生き方をしようとすると、異質な存在として周りから非難されることがあります。   また、日本で生まれ育つうち、自然と周りの人と合わせなければいけないという感覚も育まれてしまうのです。 周りから「いい人」だと思われたい。そう思って他人の目を気にしてしまう人がいます。 周りから「非常識な人」だと思われたくない。そう思って他人の目を気にしてしまう人もいます。 周りから「あの人は変わっている」と後ろ指をさされたくない。そう思って他人の目を気にしてしまう人もいるでしょう。   たしかに、誰からも愛される「いい人」であることは大切だと思います。しかし、いい人ぶってみたり、常識人であろうと過剰にがんばったり、周りに気を使いすぎて自分の意見が言えなかったりするのは、やり過ぎです。 他人と自分を比べて、「自分はあの人のようにできない」などと考えるのは、誰かの作った価値観で自分を縛っているのと同じこと。それは自由を失う大きなリスクです。   人にどう思われてもいい、そう思えた時道が開ける   持たない行き方を実践していく上では、世間的な常識や幸せ観とはズレた行動を取らなければいけない場面がやってきます。周りには理解してもらえず、相手にしてもらえなくなる時期もあるでしょう。 それでも人生には覚悟を持って自分で決断し、突き進まなければいけないタイミングが必ずやってきます。   「おまえのやり方はおかしい」「世間はそんなに甘くない」といった言葉で折れてしまうような意志ならそこまでです。どんな決断もうまくいかない可能性があります。必ずうまくいく方法もありません。   自分らしいライフスタイルを築いていきたいと本気で思うなら、「人からどう思われてもいい」というくらいの覚悟を持つこと。持たない生き方に必要なのは、「自分を持つ」という覚悟です。   一度、「流れから飛び降りてみる」ことの大切さ   本コーナーでも何度か述べてきたように、わたしは「人生は壮大な実験だ」と思っています。  特に今のような価値観の変化している時代には、他人との比較ではなく、自分で試すことが何よりも価値のある経験になります。 一昔前までは何歳で部長になり、年収はこのくらいで退社したら退職金と年金でこんな暮らしをしていこう・・・・・・というプランが描きやすい連続性のある社会でした。 その時代は実験よりも、前例に沿った行き方をする方が賢かったのかもしれません。 しかし、今は良い意味でも、悪い意味でも何が起きるかわからない非連続の社会です。 例えば、わたしのデュアルライフも一昔前には、一部のお金持ちにしかできない生き方でした。それも今はネット環境のツールの充実によって、誰もが準備と覚悟次第で実践できるようになっています。 つまり、連続していないということは社会にも個人にもどんなことが起こるかわからないということです。 決めつけた生き方では可能性を狭めるだけでなく、変化に弱いライフスタイルになってしまいます。 決まりきった正解はなく、典型的な人生もどんどんなくなってきている時代には、常に実験を繰り返し、前例のない道を歩んでいかなければいけません。   デュアルライフにしても、最初から日本と海外、東京と地方と2拠点を定めてから始めるのではなく、1ヶ月だけホテル暮らしをしてみるなど、気軽な実験からスタートしてみる。それでもし、「自分に合わない」と思えば、「今の時点では合わなかった」という実験結果が、あなたの財産になります。 期待していた結果が出た時も、出なかった時も、実験したことでチャンスが広がっていくかもしれません。 やってみなければ、良し悪しは誰にもわからない。 シンプルな教訓を大切にしていきましょう。   忙しい日々の中で、なんとなくの毎日から「強制的に飛び降りる」には   朝起きてから夜寝るまで、毎日慌ただしい日々を過ごしている人も多いと思います。あなたもそういった日常の中で行動がルーティン化し、一定のパターンどおりに過ごすようになってはいないでしょうか。   その点、旅という実験は日常のルーティンを打ち破る絶好の機会になります。 しかし、日本の一般的な会社に勤めている場合、なかなか長期の休みを取るのは難しい現実があります。 しかし、日常の中でも小さな実験を繰り返していくことは可能です。   例えば、書道家の武田双雲さんはかつてNTTに務めるサラリーマンでした。当時双雲さんは通勤電車が嫌でたまらず、どうすれば楽しくなるか考えた末、試していたのがグリーン車での通勤だったそうです。気づけば初任給の半分ほどがグリーン料金に飛んでしまったそうですが、混んだ車両を横目に座席であぐらをかいて通勤するのは「とてもおもしろかった」と語っています。   そんなふうに違う視点から日常を眺めてみるのも、人生における刺激的な実験の1つです。結局、忙しいことを理由にしていては何も始まりません。 日常を見直していくことの重要性。時には強制的に飛び降りることの大切さ。私は自戒も込めて、日産自動車のテレビCMで使われた矢沢永吉さんの、この言葉をよく思い出しています。 〜2種類の人間がいる。 やりたいことやっちゃう人とやらない人。やりたいことやってきたこの人生。おかげで痛い目にもあってきた。散々恥もかいてきた。誰かの言うことを素直に聞いてりゃ、今よりずっと楽だったかもしれない。 でもね、これだけは言える。やりたいことやっちゃう人生のほうが、間違いなくおもしろい。俺はこれからもやっちゃうよ。あんたはどうする?〜   生活の中に小さな変化を付けていくことは、年齢や家庭環境に関係なく試すことができます。配偶者がいて、子どもがいて、家庭があり、守るべき物が多くなっていたとしても365日のうちのほんの1週間だけでも実験に時間を割くこと。自分のためだけに使える時間を作ること。その試みが、あなたの次の5年、10年を大きく変えていくキッカケになります。   もちろん、わたしの主張は間違っていると捉えるのもかまいません。何事にも正解はなく、いろいろな発想、やり方があって当たり前だからです。 むしろ、「本に書いてあったから、これが一番」と鵜呑みにするのは危険なことです。 大事なのは、本気で自分で考えを突き詰め、小さなことから試していくこと。すると、必ず本人にとって財産になる視点が得られます。 あなたは、忙しさをやらないための言い訳に使ってはいないでしょうか?   11月は『「なくてもいい物」を持たない』を掲載します。   本田直之 レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役。シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役として2001年にJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行う。ハワイ・東京に拠点を構え、年の5ヶ月をハワイ、3ヶ月を東京、2ヶ月を日本の地域、2ヶ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々を旅しながら、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。これまでに訪れた国は60ヶ国、200都市を超える。 著書にレバレッジシリーズをはじめ、「50歳からのゼロ・リセット」等があり、著書累計300万部突破し、韓国・台湾・中国で翻訳版も発売。   ※本コラムは『何を捨て何を残すかで人生は決まる(青春新書)を引用しています。  

  • VOL.1

人生を身近に生きるには

〜自分にとって必要なものを見極め、それを選び取り、見た目ではない豊かさを手に入れる〜

 

    VOL.1 人生を身近に生きるには 〜自分にとって必要なものを見極め、それを選び取り、見た目ではない豊かさを手に入れる〜  

    2019年09月20日 本田直之

    あなたは今の働き方、暮らし、人間関係、収入と支出に満足していますか? 気がつくといつの間にかスケジュールが埋まり、自分のために使える時間が減っている。 自分の暮らす部屋を眺めると「なぜ買ったのかよくわからない物」がいくつも転がっている。いつの間にか付き合う人の多くが、仕事の関係で顔を合わせている人ばかりになっている。忙しく働いているのに、金銭的な余裕を感じられない……。    学校を出て、仕事を始め、充実していた日々のはずだったのが、ふと立ち止まった時に「何かが違う」と感じてしまった。仕事や人間関係を抱え込みすぎて息苦しくなっている。もし、あなたがそんな違和感に悩まされたことがあるなら、このコラムを読み進めてください。 ここで伝えたいのは、自分らしく自由に生きることです。わたしはそれを「持たない生き方」と名付けました。  持たない生き方とは、持ち物を減らす断捨離やミニマリズム、シンプルライフなどといった暮らしのスタイルやノウハウではありません。大事なのは、物を減らすことではなく、自分にとって必要なモノを見極め、それを選び取り、見た目ではない豊かさを手に入れること。    つまり、自ら考え、選択し、幸せに、自由に暮らしていく生き方の提案。それが持たない生き方です。    どういうふうに時間を使い、自分を成長させ、どんな人と付き合い、いかに働いて稼いでいけば、幸せを感じられる状態にたどり着けるのか。真剣になればなるほど、自分にとって大切なモノと、そうではないモノの違いを明確にする必要性が生じます。 そして、いらないと思ったら世間の常識に反していてもスパッと手放すことです。 つまり、捨てる勇気を持ち、実践すること。それができた時、人は「自分は自由に幸せに生きている」と実感できるのです。     大事なのは「何を捨て、何を残すか」を決断する「自分」を取り戻すこと   こうした罠から抜け出すためには、まず、当たり前とされてきた常識を疑うことです。 かつて……と言ってもほんの10年前までは、一生懸命働いて、たくさん稼ぎ、たくさんお金を使うことが幸せの一つの形でした。 しかし、今の日本は物質的にほぼ何もかも揃った状態になっています。 この先、高級車やマイホームを手に入れるため、長い通勤時間に耐え、ストレスフルな仕事や人間関係を続けたとしてもその先に幸福感や満足感はないのではないか……。    これは、草食系と呼ばれる若者をはじめ、若い世代にとって当然の感覚になっています。物を追い求め、抱え込みながら続けていく暮らしは、時間や住む場所、仕事などさまざまな制約に縛られて生きることでもあります。    こうした縛りから逃れ、何かが違うという違和感から解放されるためには、「いらないモノ」をあらかじめ決めておくことが重要です。 あなたが「いるか、いらないか」「やるか、やらないか」「持つか、持たないか」「会うか、会わないか」を選ぶ力は、誰も奪うことができません。 もし、仮に今のあなたが自分で選択する力を失っているとしたら、それはあなた自身が手放してしまっているだけではないでしょうか。     持たない生き方にとって大切なのは、自分で選択しているかどうかです。 もし、あなたが何を望んでいるか明確にわからないのなら、まずは「やりたくないこと」だけを紙に書き出してみましょう。 ルールはシンプルです。 「何々だけはしたくない!」と叫んでいる、心の声に耳を傾けてみてください。 自分で家を出る時間を決められない暮らしはしたくない。満員電車に揺られたくない。愛想笑いと気疲ればかりの飲み会には出たくない。ローンを払うためだけの労働はしたくない。他人を蹴落とすことは考えたくない。 その結果、物のないシンプルな暮らしをあなたが選び、実践しているなら、それも持たない生き方であり、逆にこれだけは集めると決めたコレクションを眺める時間が幸せなら、それもまた持たない生き方と言えます。     無駄を削ぎ落とすには「実践」が必要だ 何を捨て、何を残すか。この選択を実行に移すために役立つ考え方が「実験」です。 例えば、都心の会社で働く人が「海の側で暮らしたい」と願っているとしましょう。思い切って海の側に引っ越してしまうという手があります。また、家賃の安い地方の物件を借り、週末だけ海の側で過ごすという方法や、逆に海の側の街に仕事を見つけるという道もあるでしょう。 しかし、現実にはいくつもの選択肢を思い浮かべながら行動に移さず、時間が流れてしまうケースが多いのではないでしょうか。 そこで、「実験」を始めてしまうのです。 海の側にどんな賃貸物件があるか、ネットで調べ、現地に行き、見学するのも小さな実験です。そして、半年だけ借りてみて都会と海辺の週末デュアルライフを始めてみる。その体験は、本人に次の実験の必要を感じさせてくれます。 本気で海の側にいたいと実感できれば、仕事を変えること、さらには生き方を変えることまで視野に入ってくるかもしれません。 他にも、「オフィスに向かう通勤経路を変えてみる」「一ヶ月の生活費を今の半分にしてみる」「年に1回ネット環境のない場所で過ごしてみる」「部屋の中にある物を徹底的にいる、いらないで分別する」「飲み会の二次会には行かないと決める」など、生活に変化をつけるこういった試み一つ一つが、小さな実験です。 仕事も、お金も、人間関係も、あえて新しいやり方、考え方を試してみることで自分にとって何が必要で、何が必要でないかが見えてくる。 人生は一つの壮大な事件です。正解でも不正解でも、成功でも失敗でも、そこで得た経験はあなたの財産となります。 「誰かにやらされている」という発想では、生き方を変えていくことはできません。 時間が足りないからできない。物が多すぎて決められない。人間関係がわずらわしい。今、抱えている不満や不足、息苦しさを変えられるのは自分だけです。生き方を変えるためには、矢面に立つ覚悟が欠かせないのです。   このように生き方にまつわるあらゆる局面で、「何を捨て、何を残すか」を自分の価値観に照らしあわせ、選択していくこと。この決断が、あなたの人生を形作っていくのです。     持たない生き方を身につけることが、あなたの価値を高めていく これからは何かを集めるのではなく、減らし、削ぎ落としていく感覚と、自分にとって本当に必要かどうかを見極める能力が重要になってきます。   そのためには、自分の柱となる価値を知ることが欠かせません。 なぜなら、「自分のライフスタイルで重要なモノはなんなのだろう?」と見極められないままでは、やみくもにあれが欲しい、これが欲しいと感じる欲を手放せないからです。持たない生き方を実践するには、自分の価値観を持つことが必要になります。   わたしの場合、「仕事と遊びの垣根をなくすこと」「好きな時に好きな場所で生活をしながら、仕事をすること」が中心にあり、そのテーマを柱に「持つ、持たない」を選んでいます。 どこにでもある当たり前のモノを増やした結果、地元に息づいていたオリジナリティは失われ、魅力のない過疎地域となってしまうかもしれません。 人への評価も同じで、変化の大きな時代だからこそ、オリジナリティを大切にしながら持つ、持たないを見極め、生きていくことが重要です。 他人の常識から飛び降りて、自分の価値観を信じて進んでいきましょう。 そうやって確立した持たない生き方が個性となり、評価される。あなたもわたしもそんな時代に生きているのです。   本コラムがあなたにとってのベストな生き方、働き方を送る助けになれば最高です。   10月は『「人生を縛る常識」を持たない』を掲載します。   本田直之 レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役。シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役として2001年にJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行う。ハワイ・東京に拠点を構え、年の5ヶ月をハワイ、3ヶ月を東京、2ヶ月を日本の地域、2ヶ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々を旅しながら、仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。これまでに訪れた国は60ヶ国、200都市を超える。 著書にレバレッジシリーズをはじめ、「50歳からのゼロ・リセット」等があり、著書累計300万部突破し、韓国・台湾・中国で翻訳版も発売。   ※本コラムは『何を捨て何を残すかで人生は決まる(青春新書)を引用しています。